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自転車道設計についての仕事紹介

ひとにやさしい道づくり
~栃木県内で初めての自転車道設計~

交通情勢の変化

我が国の道路はこれまで、経済の発展や人口の増加と一緒に急速に整備が進められてきました。しかし道路ネットワークの拡充と同時に交通安全の問題も顕在化し、1980~1990年頃には交通戦争なる言葉まで生まれるほどの社会問題となりました。
この問題の対策は種々講じられてきましたが、現代がくるま社会であるがゆえ、くるま中心の対策となり、交通弱者(子供、高齢者などの事故に事故に遭いやすい歩行者、移動を制約される人、自転車など)の対策が後手に回っているのが現状です。栃木県も例外ではなく、典型的な車社会として道路ネットワークが発展してきた経緯があります。
特に自転車に関しては、十分な通行空間が確保されていないことと歩行者の延長線上という曖昧な認識の相互作用により、車と自転車、自転車と人の事故が多発し、時には交通弱者で時には事故の加害者になりうるという問題が発生しています。
またドライバーの高齢化、環境意識や健康意識の向上に伴う自転車利用者の増加といった背景もあり、近年では全国的に、自転車の安全な通行方法に関する議論が活発化しています。

事例紹介

交通情勢の変化に対応した道路設計の実例も増えつつあります。通行空間の理想的な配分をテーマとして、当社が設計した自転車道の事例を紹介します。
設計した路線は、JR宇都宮駅より大谷方面へ至る、延長約6km、総幅員30mの道路(通称大通り)のうち、作新学院付近から宇都宮環状線に至る約1.8kmの区間です。このうち約1.4kmは、すでに幅員30mで供用中です。

設計前・設計後イメージ 設計前・設計後イメージ

~設計した道路の特徴~

この路線は、駅前大通りとして多様な交通の発着路線となっているほか、重要な通勤通学路となっており、朝のラッシュ時には相当な数の自転車(1時間に約700台)と歩行者が通行します。
以前は歩道の幅員も不十分で、自転車の通行ルールも徹底されていませんでした。
ここから西にある東北自動車道に整備予定の(仮)大谷スマートIC完成後は、更に交通需要が高まり、自動車交通量が増加する路線です。
また自転車だけでなく路線バスの運行本数も非常に多く、朝の通勤通学時間帯の1時間で約40本(1分半に1本)が運行されており、この区間の交通状況は過密状態となっていました。
交通機能とは別の側面での重要性もあります。大通りは、宇都宮市が強力に整備を推進する自転車ネットワーク路線に含まれるほか、観光資源としての自転車周遊ルートの一端も担っており、自転車と歩行者に対する高い安全性が要求される路線です。

宇都宮市自転車ネットワーク図・宇都宮自転車マップ・周遊ルートの道標イメージ 宇都宮市自転車ネットワーク図・宇都宮自転車マップ・周遊ルートの道標イメージ
設計の基本方針イメージ 設計の基本方針イメージ

~設計の基本方針~

この設計では、決まった幅員(30m)の中で、ひと、自転車、車が安全に通れる道路空間をどのように配分するかが焦点となりました。
幅員の狭い道路では、自転車通行帯のペイントによって自転車を歩行者や車から分離するしかありません。もちろんこれもアリですが、大通りは総幅員に余裕があり車道以外の幅員が十分に確保できるため、新たな試みを行いました。
これまで、広幅員の歩道であれば、歩道の中央付近に白線を引いたり、歩道の半分を着色するなどして自転車の分離を図るのが一般的でしたが、大通りは自転車交通量が極端に多い点や、数少ない広幅員道路の新規整備であること、本格的な自転車分離事例が県内にないなどの理由から、県内初のモデルケースとして、構造的に独立した自転車道を採用する方針となりました。

苦労した点イメージ 苦労した点イメージ

~苦労した点~

設計当時は、道路交通法の改正を受けて栃木県を含む各自治体が自転車と歩行者の通行に関するマニュアルの策定を進めているところでした。
自転車の分離方法に関して明確な決まりがない状態であり、かつ今回の設計がマニュアルを適用する最初の実例となることから、関係者との調整に多くの時間を割きました。
主な関係者と調整内容は次のとおりです。
・県庁:県のモデルケースにふさわしい明確な構造か。
・バス会社:乗降客の安全を確保できる構造か。
・警察:自転車道として指定できる通行区分となっているか。
また机上だけの議論にならないよう留意しました。規定の数字に表れない感覚を理解するために県外の実例を視察するとともに走行調査も行い、利用者目線の設計になるよう心掛けました。
調査の結果、自転車同士のすれ違いの際はお互いの相対的な速度が高いため、規定の最小幅よりも大きい側方余裕が必要であると感じました。それに対して歩行者は移動速度が遅いため、余裕幅を多少狭めても路上施設などを避けることができ、実用上問題ないことが確認できました。

~断面構成の決定~

以上の経緯を踏まえて関係者との最終的な調整を行い、道路の幅員構成を決定しました。
自転車交通量が特に多いことから、安全性を考慮して自転車道の有効幅員を広く確保しました。
そして、電線共同溝の地上機器や標識、照明等の路上施設は、歩行者の安全な通行空間を確保したうえで歩道に配置しました。
設計区間にはバス停が点在しますが、乗降客の集中する朝夕の時間帯でも、自転車と歩行者の事故を防ぐことのできる幅員を確保しました。

断面構成の決定イメージ 断面構成の決定イメージ
本格運用に向けての準備イメージ 本格運用に向けての準備イメージ

~本格運用に向けての準備~

また、供用開始とともに安全で円滑に通行してもらえるよう、自転車道の本格運用に先立ち、社会実験期間を設けて交通ルールの浸透に努めました。
実験期間中は、カラーコーンによる簡易構造としました。

安全に歩ける、走れる道路とするために

ここで紹介した事例は、幅員構成に余裕がある道路における理想的な空間の配分ですが、理想的な幅員で道路ネットワークを形成するためには克服すべき多くの課題が残ります。道路整備が進み市街地の形成が進んだ現在では、理想的な幅員を確保することが困難であり、必要最小限の幅員確保という対応にならざるを得ない状況です。
しかし、それでも可能な範囲で最大限の安全性を確保するために通行空間の再配分を進める必要があり、栃木県内の各自治体では自転車ネットワークの拡充に努めているところです。
また、せっかく通行空間を再配分しても、正しく利用されなければ造った意味がありません。そのためには、道路利用者の意識の徹底が必要であり、ソフト、ハード両面で進歩しなければなりません。
ひとにやさしい道づくりには地道な努力が必要であり、現在はまだ、実現までの過渡期であると考えます。
道路利用者すべてにとって有益な道路ネットワークが形成されることを期待するとともに、当社の設計がその一助となる提案ができるよう、日々業務に取り組んでいます。

断面構成の決定イメージ 断面構成の決定イメージ

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